男性は臭いに気配りを (宅島)
蒸し暑い日が続き、汗や皮脂が気になる季節です。男性の臭いが問題視され、最近は、周囲に嫌な思いをさせる「スメルハラスメント」という言葉も出回るほど。そんな中、若い女性が男性の汗の臭いを嗅ぐ能力は、中年男性の約10倍あり、女性の方が体臭に嫌悪感を示すという調査結果が明らかになりました。年代、発生原因に応じた男性の「臭い対策」が求められているのです。
●年齢によって変化
男性の体臭は年齢によって変化します。原因となる汗や皮脂そのものは無臭なのですが、酸化したり、雑菌が皮脂などを分解する際に、臭いが発生するのです。
中高年の男性が発する加齢臭は「ノネナール」という物質が原因で、1999年、資生堂などが発見しました。女性にも加齢臭はありますが、男性ホルモンが皮脂分泌を活発にするため、男性は女性に比べて一般的に皮脂量が多いのだそうです。さらに、女性は年齢を重ねるとともに少なくなるのに、男性は50歳を超えても皮脂量はほとんど減りません。
その皮脂が皮膚常在菌などで酸化、分解されると臭いが発生するのです。
皮脂量の多い部位は頭、首の後ろ、胸や背中などで、枕の臭いが気になるというのも、頭部から発生する臭いが原因です。そのため、これらの部位の皮脂を洗い落とした後、他の臭いと混ぜて目立たなくするための香料を使ったシャンプーや洗浄料の販売が行われています。
一方、2013年には、中高年の臭いのうち、枯れ草のような臭いはノネナールが原因の加齢臭だが、古い油のような臭いは「ジアセチル」という別の物質が原因であることが分かり、「ミドル脂臭(ししゅう)」と名付けられました。
加齢臭は50代以降に増えるのに対して、ミドル脂臭は30代から発生します。ジアセチルは汗の中の乳酸を菌が分解して発生し、皮脂から来た中鎖脂肪酸と混じって嫌な臭いとなるのです。主な発生部位は頭で、臭いを防ぐには殺菌しながら皮脂を洗浄できるよう、頭をよく洗うことが重要です。ミドル脂臭を抑えるシャンプーやデオドラントスプレーなどが発売されています。
また、10~30代に多い汗臭(あせしゅう)は、「イソ吉草酸(きっそうさん)」など別の物質を菌が代謝することで起こります。わきなどが発生源で、デオドラント剤が効果的です。若者には加齢臭はありませんが、40~50代では、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭それぞれが混ざって存在することになります。
今回明らかになった調査結果では、どの臭いも女性のほうが強く感じ、汗臭とミドル脂臭は男女とも不快度が高くなりました。中でも、汗臭は若い女性には最も許容できず、25~34歳の女性の全員が「我慢できない」と回答しました。
ミドル脂臭は若い世代ほど不快を感じました。逆に加齢臭は男女とも9割近くが我慢できると回答しました。
●「制汗剤必要」7割
汗を抑える男性用の制汗剤の市場は伸びており、2007年に71億円だったのが、昨年は107億円に膨らんだそうです。暑い年は増える傾向にあり、今年は4月までに既に前年比で17%増とか。
男性のほうが汗腺の機能が高く、気温が低くても汗をかきやすいため、男性の7割以上が「制汗剤を使うことは身だしなみとして必要」と考えているそうです。利用者の要望が高い防臭・消臭効果、冷涼感、使用感の良さを改良した男性向け製品も登場しています。
臭いのついた衣服や寝具を洗うことも必要です。昨年、衣料用消臭剤の中に男性向け製品が導入され、人気を呼びました。
衣料用の消臭剤市場は2013年に157億円だったのが14年には183億円と大幅に伸び、うち4割は男性が購入しています。特に20代など若い世代を中心に清潔意識が高まっているそうです。こまめに洗濯したうえ、臭いが発生する前に抗菌作用のある消臭剤を利用するのが効果的です。
●女性は嗅覚鋭い
ある調査によると、同僚や上司が臭うときに、一緒に仕事をしたくないと思う人は42%に上る。企業向けの「ニオイケアセミナー」を実施する化粧品メーカーも登場しています。
なぜ、女性は男性の臭いが気になるのでしょう?人間科学の専門家によると、「男性は自分の臭いにはなれてしまって、自分で気づきにくい」そうです。さらに、女性は、妊娠中や自分の子供が食べてはいけないものを臭いで判断する体の仕組みがあり、嗅覚の感受性も一般的に女性のほうが高いのだそうです。
出典 毎日新聞生活報道部